X線で化学反応中の元素の動き―実験室で使える動画化技術を開発:物質・材料研究機構
(2017年8月28日発表)
(国)物質・材料研究機構は8月28日、化学反応で刻々と変化する元素の動きを動画化することに成功したと発表した。X線の照射で各元素が発する固有の蛍光をとらえ、その画像を連続的に取得する技術を確立した。通常の実験室でも利用可能な小型・軽量・低消費電力の装置で動画が得られ、さまざまな化学反応のメカニズム解明に役立つという。今後は新材料の開発に役立てたいとしている。
物質にX線を照射すると、物質を構成する元素の種類によって異なるエネルギー(波長)の蛍光X線を発し、その強度は元素の量が多いほど強くなる。そのため出てくる蛍光X線のエネルギーと強度をとらえれば、物質中に含まれる元素の種類と量を調べられる仕組みだ。
同機構は今回、この原理を化学反応で時々刻々と変化する各元素の動きを二次元画像として撮影することに応用、その動画化に成功した。大きなX線ビームを試料に照射、試料表面の各点から出てくる蛍光X線をカメラのように二次元画像として一度にとらえる仕組みだ。そのため通常は可視光用カメラとして使われている冷却CCDカメラやCMOSカメラなどからなる二次元検出器を開発、ごく普通の実験室で使えるような小型・軽量・低消費電力の装置を実現した。
実験では、塩化カルシウムと硫酸鉄の混合粉末を水ガラス(ケイ酸ナトリウムの濃い水溶液)中に置いたときの化学反応を、新技術で観察することを試みた。この化学反応では結晶が樹木のように成長し色や形が時々刻々と複雑に変化して分布していくが、新技術で鉄とカルシウムの動きを別々にとらえた。その結果、黒っぽい濃緑色部分が鉄、白っぽい部分がカルシウムの集まっている場所に対応することや、枝状構造が作られていく過程などが動画として観察できた。
これまで蛍光X線をとらえて二次元画像を得るには、細いX線ビームを試料の表面に走査して各点から出てくる蛍光X線をとらえて画像化する方法が主流だった。しかし、1枚の画像を得るのに時間がかかり過ぎ、動画化するのは難しいとされていた。