地球温暖化で主要穀物の収量増加は鈍化へ―収量増大の維持には高温耐性品種の開発など必要:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2017年8月28日発表)
農研機構農業環境変動研究センターは8月28日、国際農林水産業研究センター、国立環境研究所と共同で、地球温暖化による世界の主要穀物の収量変化を、開発途上国における収量増加策の導入を考慮に入れて予測し、その結果を公表した。
トウモロコシとダイズは今世紀末までの気温上昇が1.8℃未満でも、またコメとコムギは3.2℃を超えると、収量の増加が停滞し始めることが分かったという。主要穀物の収量を今後も増やし続けるには高温耐性品種の作出など、気候変動への適応技術の開発が求められるとしている。
世界の主要穀物はコメ、コムギ、トウモロコシ、ダイズの4種。気候変動がこれらの収量に与える影響を予測した研究はこれまでもあるが、途上国での社会経済発展に伴って見込まれる品種改良や施肥管理方法の改善など、従来の増収技術の普及拡大が及ぼす影響は考慮されていなかった。
共同研究グループは、途上国で普及するであろう既存の増収技術と、気候変動への対処として簡易に取り組める対策技術を予測の条件に加え、産業革命以前から今世紀末までの気温上昇が1.8℃、2.7℃、3.2℃、4.9℃の場合の、それぞれの今世紀末(2091-2100年)までの収量変化を数値モデルを用いて予測した。
その結果、トウモロコシとダイズの今世紀末時点での収量増加は、上昇温度が1.8℃にとどまった場合でも抑制され、気温の上昇が大きいほど収量増加が低くなることが分かった。コメとコムギは上昇温度が3.2℃を超えると収量増加が停滞し始めるものの、それ以下の気温上昇ではあまり影響がないことが分かった。
これらの結果から、今後、気候変動の下で収量増加を継続するためには、簡易な対策では不十分であり、積極的な気候変動への適応技術の開発普及が必要なことが示唆されたとしている。