アサガオのゲノム編集に初めて成功:筑波大学/農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年8月30日発表)
筑波大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構は、アサガオのゲノム編集に世界で初めて成功したと8月30日に発表した。花を紫色にする天然色素成分のアントシアニンの酵素の働きを抑え、白い花のアサガオを作った。
ゲノム編集は、生物の設計図であるゲノムの中の狙った部分に遺伝子を導入したり、特定の遺伝子に変異を起こしたりできる革新的な技術。
遺伝子組み換え技術よりも圧倒的に高い確率で遺伝子を精度良く改変できるのが特長で、様々な生物への適用が進んでいる反面、育種法の規制を巡って様々な議論が起きている。
アサガオは夏の庭先に赤、紫、ピンク、白など様々な色の花を咲かせることで親しまれている。また豊富な遺伝資源を持つモデル植物でもあり、最近、全ゲノムの塩基配列も解読された。
今回は茎や花の紫色素であるアントシアニンを合成する酵素の遺伝子DFR-Bを、ゲノム編集によって働かないように操作するモデル実験をした。
DNAの二本鎖を切断して削除や、置換、挿入ができるCRISPR/Cas9を、アサガオの未熟胚培養細胞に導入した結果、アントシアニンを合成する遺伝子DFR-Bが働かなくなり、茎と花にアントシアニンを含まないものが75%という高い割合で得られた。
これはゲノム編集によって機能を喪失させる手法であり、花を白色に、茎を緑色に変化させたアサガオを作れた。種子もでき、後代にも緑色の茎で白い花のアサガオが育った。
奈良時代に中国から伝来して以来、江戸時代に自然変異で白色の花が生まれるまでに約850年かかったが、ゲノム編集ではたった1年で白色アサガオが実現した。
筑波大学では、この技術によって遺伝子機能の解析や、品種改良に有効なことが確認されたとしている。