窒化ガリウムで圧電薄膜―世界最高性能を実現:産業技術総合研究所/村田製作所
(2017年8月31日発表)
(国)産業技術総合研究所と(株)村田製作所は8月31日、圧力や振動などの機械的なエネルギーを電気に変換する圧電素子を窒化ガリウム薄膜で作成、世界最高性能を実現したと発表した。道路や橋などの微小振動から電気を得るエナジーハーベスターやセンサーなどへの実用化が期待されるほか、自動車間通信や自動運転システムに不可欠な高周波集積回路の開発にもつながると期待している。
LEDなどへの利用で知られる窒化ガリウムは機械的な特性が優れているため、圧電素子への利用が期待されている。しかし、単結晶に比べて製造工程を低コスト化・省エネ化できる薄膜で単結晶並みの特性を持つ窒化ガリウム素子を実現するのはこれまで難しいとされていた。
研究グループは今回、単結晶並みの特性を持つ窒化ガリウム薄膜の実現には結晶の向きがよくそろった質の高い薄膜を作ることが必要と判断。まずシリコン基板上にいったん金属のハフニウムやモリブデンの金属薄膜を結晶成長させ、その表面に比較的低温で薄膜を作れるRFスパッタ法と呼ばれる技術で窒化ガリウムの薄膜を形成した。
その結果、結晶の向きがよくそろった質の高い窒化ガリウム薄膜が作成でき、圧電特性が単結晶と同等であることがわかった。また同様に圧電特性を示す窒化アルミニウム薄膜では元素「スカンジウム」を添加すると性能が飛躍的に高まることが知られているため、窒化ガリウムの薄膜形成時にスカンジウムを添加したところ、無添加の場合に比べて圧電特性が4倍にまで向上した。
この薄膜を用いてスマートフォンなどの通信機器に不可欠な高周波フィルターを試作したところ、スカンジウム無添加と添加した薄膜のいずれでも良好な共振特性を示した。特に添加した薄膜では圧電素子の性能を示す指標「電気機械結合係数」が約6%と、窒化ガリウム圧電薄膜としては世界最高性能を記録した。
研究グループは「今回開発した方法によって、窒化ガリウムの圧電薄膜に異種元素を添加できるようになった」として、今後は高価なスカンジウムに替わる安価な元素を探索するとともに、圧電特性をさらに向上させる技術開発に取り組む。