金星の大気に未知のジェット気流あることを発見―探査機「あかつき」の成果、「赤道ジェット」と命名:北海道大学/宇宙航空研究開発機構
(2017年8月29日発表)
IR2 の1.735μm 画像と2.26μm 画像から疑似カラー化した金星夜面。
1.735μm→赤、2.26μm→青、両面の平均→緑に着色し合成している。昼側の明るさが強い1.735μmでは夜側にかぶさる光も多く、昼夜境界付近がオレンジ色っぽくなっているのはそのためである。夜側の微妙な色調の差は、雲粒子の大きさの違いなどを表していると考えられる。©JAXA
北海道大学と(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月29日、金星の大気に未知のジェット気流があることを金星探査機「あかつき」を使って発見、「赤道ジェット」と命名したと発表した。
金星は、地球とほぼ同じ大きさの惑星で「地球の兄弟星」といわれる。
だが、環境は、地球と大きく異なり、地表の温度は約460℃、気圧は90気圧に達し、高温の二酸化炭素(炭酸ガス)で覆われている。
さらに、金星の大気の上層部では、自転をはるかに上回る速さで流れる「スーパーローテーション」と呼ばれる強風が吹いている。
しかし、スーパーローテーションがどのようなメカニズムで発生しているのかはまだ解明されていない。研究グループは、今回の「あかつき」の成果がその謎を解く一つの鍵になるものと見ている。
「あかつき」は、1.04m×1.45m×1.40mの直方体で、JAXAが2010年5月21日に打ち上げた。重さは、約500kg(打ち上げ時)。金星の大気を赤外線、可視光線、紫外線で撮影する5台のカメラと、気温などの高度分布を観測するための電波発振器を備え、金星を約10日で1周する楕円軌道を回りながら大気の流れや組成、雷や火山活動の有無などを調べている。
宵の明星、明けの明星と呼ばれる金星の輝きが見られるのは、分厚い雲によって太陽光が反射されるからで、可視光では雲の下は見通せないが、限られた種類の赤外線は分厚いその雲を透過できることが知られている。
研究グループは、「あかつき」搭載の赤外線カメラで特に分厚い高度約45〜60kmの中・下層雲を可視化し、その撮像データから風速を求めた。その結果、2016年7月の観測で赤道付近の風が秒速80〜90mに達するジェット気流「赤道ジェット」になっていることを発見した。赤道ジェットは、その後少なくとも2ケ月間は吹いていたという。
研究グループは「この高度帯の風速は、水平一様性が高く時間変化も少ないと考えられてきたが、予想外に大きな変動があることが「あかつき」の観測による今回の研究で初めて明らかになった」といっている。