ファインマンも解けなかった問題を解明―電磁誘導とローレンツ力の関係を量子力学・ゲージ場理論で解釈:筑波大学
(2017年9月6日発表)
ローレンツ力と電磁誘導
筑波大学の小泉裕康准教授は、9月6日、磁場を横切る導線に生じる誘導起電力が「ファラデーの電磁誘導の法則」と「ローレンツ力」という2つの本質的に異なる方法で求めることができるのはなぜかを解明したと発表した。
音楽レコード盤の溝にある凹凸を電気信号に変えるピックアップカートリッジには、針に磁石をつけ、その動きによって周囲のコイルに生まれる電磁誘導電流を取り出すムービング磁石型と、針にコイルをつけ、周囲に磁石を置いて、コイル内電荷のうけるローレンツ力で、電流を発生させるムービングコイル型がある。大局的にみると、磁石とコイルを相対的に動かしている原理であるが、古典電磁気学としては別の説明がなされてきた。
この伝統的な課題に対して、量子力学・ゲージ場理論の立場からの解釈を試みている。量子力学では電子の動きを量子波束で表現しており、その波の記述において「位相因子(いそういんし)」の果たす役割は大きい。その「位相因子」が、電子のローレンツ力による並進運動を表すという面と時間に依存するゲージ場中のゲージポテンシャルという面の2重性を持っていることが上記古典的解釈の違いに繋がっていることを示している。(ここでゲージ場とは、電荷間に働く相互作用を媒介する場である。)
つまり、ゲージポテンシャルを使って、電場・磁場を統一的に扱うことの有用さを明らかにしており、それによって、超伝導現象における永久電流と磁束の量子化のような巨視的量子力学過程が見通しよく記述出来るようになったと言える。この研究は、巨視的量子力学現象を使った素子開発など応用への貢献も期待される。