エアロゾルの時間的空間的な分布変動を正確に再現―エアロゾルの天候や健康への影響評価向上へ:気象研究所/九州大学
(2017年9月4日発表)
気象庁気象研究所と九州大学の研究グループは9月4日、大気中を浮遊する粒子状物質エアロゾルの時空間の分布変動を高精度に再現できる手法を開発し、過去5年分のデータセットを作成したと発表した。エアロゾルの天候・気候、健康、生態などへの影響の評価向上が期待できるという。
PM2.5や黄砂、森林火災や火山噴火でまき散らされる浮遊粒子などは、温室効果ガスの二酸化炭素やメタンなどとは違い、大気中での寿命が短く、濃度分布の変動が大きいことから、時空間分布の高精度な再現は難しく、エアロゾルの影響の研究や評価を難しくしていた。
エアロゾルの空間的な分布や時間的変化を再現する手法としては、コンピュータによる数値シミュレーションがあり、気象研究所が全球エアロゾル輸送モデル(MASINGAR)として開発を推進している。
研究グループは今回、この数値モデルによるシミュレーションに、実際の観測で得られた情報を統計的推定論を用いて融合させる「データ同化」という技術を導入し、衛星観測データを取り込むことによってシミュレーションの精度向上を実現した。
観測データ、数値モデル、データ同化を組み合わせて時空間分布を再現することを再解析といい、研究グループはこの手法を用いて、2011年1月1日から2015年12月31日までの5年間の全球エアロゾル再解析データセットを作成した。
このデータセットにはエアロゾルの情報が、緯度経度約1度の空間解像度、6時間の時間解像度で納められていて、全球の任意の場所、任意の時間のエアロゾル濃度や、大気の濁り具合を表すエアロゾル光学的厚さ、エアロゾルの沈着量などを知ることができる。
今回開発したデータ同化技術は黄砂予測にも応用可能で、視程の悪化による交通機関への影響や、洗濯もの、車の汚れなどの予測向上が期待されるという。
作成したデータセットはwebページを通じて研究コミュニティに広く公開されるという。