人工知能を活用した業務マニュアルの作成、更新法を開発:産業技術総合研究所/新エネルギー・産業技術総合開発機構
(2017年9月6日発表)
(国)産業技術総合研究所人工知能研究センターと(国)新エネルギー・産業技術総合開発機構は9月6日、老人ホームなどの介護現場で従業員が共有でき、更新も簡単にできる新たな業務マニュアルの作成方法を開発したと発表した。
高齢化で医療や介護のニーズは高まっているものの介護人材はますます不足している。限られた従業員の間で効率よく介護、看護に当たり、お互いに情報を共有し、内容を高めていくには、現場の実態に合わせて練りこんだ業務マニュアルの整備が欠かせない。
ところがマニュアルの作成や更新は、文章化に当たって担当者の表記法がまちまちであったり、従業員の負担が大きかったりで、使いにくかった。マニュアルにない事態が発生した際の対応も蓄積、共有されにくいという問題があった。さらに介護サービスは現場ごとに異なるため、必要とされる知識が違い共通化しにくい事情もあった。
産総研は、チームワークを強化し、業務の知識や気づきを共有し、分析できるシステムとしての「知識発現支援方法」を、人工知能を使って開発してきた。
今回はこれを基に介護現場で使いやすいように改善した。新人の人材育成や、注意すべき内容を盛り込んだリスク低減、チームで知識を共有できる業務の品質向上などに役立つ。
どの介護現場でも共通してよく起きる行為を「基本構造化マニュアル」としてまとめた。これを各現場の事情に合わせて調整した「固有構造化マニュアル」を作った。
マニュアルは普通の文章で表記せず、専門的な処置を短いキーワードにし、それぞれを四角で囲み、線で結んで業務の流れが一覧できるようにした。
従業員同士の情報のやり取りはSNS(Social Networking Service)を使う。送信時にあらかじめ決められたタグや、気持ちを表現するステッカー、スタンプなども追加できる。
「固有構造化マニュアル」は現場をよく知る従業員が作成し、更新する。日常業務の中で気付き、収集した情報を記録し、蓄積する。
介護現場だけでなく、教育や製造現場、健康増進分野などでも応用できるとしている。
産総研はこのマニュアルを改良しながらより使いやすく高度化するために、作り方を公開し、特別養護老人ホームやグループホーム、地域包括支援センターなどで協力してくれる事業所を募集している。