電圧をかけずに使える新しいトランジスタの実現近づく:物質・材料研究機構
(2017年9月7日発表)
私たちの日常生活は、電気無しには成り立たないといって過言ではない。具体的には、電池、キャパシター、センサーなどの電気化学の分野のデバイスをフルに活用している。これらのデバイスを使うためには、電気エネルギーが必要である。これからの時代、電気エネルギーの有効利用は重要となってきている。そこで、従来型の電圧をかけると作動するというデバイスではなく、新しい方法で電気エネルギーの活用が可能にならないかという研究が行われてきた。その結果、(国)物質・材料研究機構(NIMS)は、電圧をかけて電流を流すタイプではなく、「磁場を利用してイオンを運ぶという方法」、つまり磁場を利用して電流を流す事に成功した。
NIMSの研究グループは、液体状の磁石といわれてきた磁性イオン液体を用いた。磁性イオン液体を、電気を帯びたイオンとして扱い、磁石を使ってイオンを運ぼうと考えたわけである。このようにすることで電気を流したのと同じ効果が得られるため、これを電解質として用いた電気二重層トランジスタの製作を行った。実際に、磁場をかけると、電解質中の磁性イオンが流れ始め、磁場のみでトランジスタとして使える可能性があることが見いだせた。
今回の実験では電磁石を用いたが、今後は永久磁石を用いることにより、省エネルギーな情報通信デバイスの開発が期待されるとしている。またさらに、電池やキャパシターなど、トランジスタ以外の電気化学の分野のデバイスについても、外部電源に依存しないで活用できるように研究を進める予定としている。