細胞に取り込まれたカーボンナノチューブ量を測定―20~50%は免疫細胞内で生分解:産業技術総合研究所
(2017年9月12日発表)
(国)産業技術総合研究所は9月12日、細胞に取り込まれたカーボンナノチューブ(CNT)の量を測定する技術を開発したと発表した。この測定法を用いて免疫細胞に取り込まれた単層CNT量の変化を調べたところ、細胞内で20~50%の分解が認められた。CNTの生体への影響調査に有用な測定法としている。
ナノ炭素材料であるCNTは近年各種の応用製品開発が進んでいる。それに伴い、CNTが環境にさらされることにより動物や人体に吸収され、免疫細胞に蓄積する恐れが指摘され、健康への影響が懸念されている。
産総研はスーパーグロース法という独自の単層CNT合成手法を開発し、日本ゼオン(株)と共同で量産化を実現したが、今回CNT の安全性評価の一環として日本ゼオンCNT研究所と協力し、細胞内に取り込まれたCNT量の測定法を開発した。
新測定法は、CNTが近赤外光を吸収する特性を利用している。CNTを取り込んだ細胞を溶かした液は近赤外光を吸収するが、細胞を構成している生体物質は近赤外光を吸収しないので、細胞溶解液の近赤外光吸収量を測定するとCNT量を定量出来る。
実験では免疫細胞に、スーパーグロース法で作った単層CNTを取り込ませ、7日間細胞を培養、その間のCNT量の変化を調べた。その結果、実験に用いた3種類の免疫細胞で、いずれも20~50%のCNTの生分解を認めた。
研究グループはこの生分解メカニズムの解明を目指し、活性酸素の経時変化を測定したところ、CNTが生分解されると活性酸素の発生量は減少し、細胞への毒性が低下することが示唆されたという。
今後CNTの安全管理への重要な知見が期待されるとしている。