イネ科の植物によるバイオ燃料を開発し、事業化に成功:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2017年9月12日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月12日、イネ科の多年草のエリアンサスを資源植物「JES1」として改良し、栃木県さくら市内で栽培し、ペレット燃料に加工して、市内の温泉施設の燃料として事業化することに成功したと発表した。資源植物は国際農林水産業研究センター(JIRCAS)と共同開発し、耕作放棄地での栽培とペレット加工は造園業の(株)タカノ(栃木県さくら市)が手がけた。農地の有効利用と、地域自給燃料の実現による地域振興が期待される。
資源作物からバイオ燃料にするには、食糧生産と競合しないことが絶対条件になる。その上で収量が高く、低コストで、持続的に栽培ができ、水分量が低く、燃料への変換効率が高いなど、幾つもの条件が必要とされる。
農研機構とJIRCASはこの条件にかなったイネ科のエリアンサスに注目し、JES1の育成に成功した。試験栽培では1ha(ヘクタール)当たり22tから25t収穫できた。雑草化の心配があるため、熱帯・亜熱帯には種子を持ち込まないことを決め、九州以北から東北南部にかけての地域で普及を目指す。
ストーブ燃料などに使われる円柱固形状のペレット燃料は、これまで木質原料に限られていた。草系は木質系に比べて発熱量が低いうえ、灰分が多くボイラー内で固まってしまうため排出されにくく、実用化しなかった。
エリアンサスは、発熱量が1kg当たり4,000kcalを上回り、スギ木粉(4,570kcal/kg)と同程度。灰分はスギ木粉(0.3%)の10倍近いものの、草系としては低い部類に入るためバイオマス燃料として使えると判断した。
草系を使う専用ボイラーは、(株)タカノがボイラーメーカーの協力で改良した。市営「もとゆ温泉」にこのボイラーを設置し、シャワー用の熱源として使っている。排出される灰分は今後、肥料として農地に還元することにしている。
同温泉で必要なペレット燃料は年間210tで、2017年は半分をエリアンサス、残りを木質原料(伐採木)で賄うが、今後は栽培を拡大し全量をエリアンサスにする。
バイオマスは燃焼して排出される二酸化炭素ガスが、植物の光合成で吸収され相殺されることから温室ガスを排出しないとみなされている。