農業用水路をモバイルで簡単管理、災害や老朽化の対策に:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年9月12日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月12日、農業用水路の水位管理や異常、劣化の兆候をモバイル端末で簡単に記録し、データを蓄積して補修や更新計画につなげるシステムを開発したと発表した。
農研機構と民間会社が以前に共同開発した3次元地理情報システムをパソコン上で使う。位置情報に地形、土壌、農地、水路などの農業関連データを重ねることで、様々な分析が可能になり、さらにネットワークによる空間解析などの高度な利用もできる。
担当者はモバイル機器を持って農業用水路を見回り、その変化や異常を写真に収め、音声や文字でも気づいたことを送信する。事務所のパソコンには3次元情報システムによる台帳フォームが用意され、受信した情報をパソコンに蓄積し、地図ソフトで確認し、表計算などでの処理もできるようにした。
現場での入力をできるだけ簡素化する一方で、事務所での台帳入力はあえて手作業としたのが特徴。手作業によって、忘れがちな更新時期の迫った農業施設の存在や、耕作放棄などとの関係に気づくなど、日常の管理にも活かすことができる。
農研機構はこのシステムを使って三重県松阪市付近の立梅(たちばい)用水土地改良区で実証実験を始めた。立梅用水は約200年前の江戸時代に作られた28kmの農業用水で、世界「かんがい施設遺産」に登録されている。
土地改良区は全国に約4,700組織あるが、その7割が小さな組織であり職員の高齢化や施設の老朽化が進んでいる。施設の管理運営や補修、更新計画にも支障が生じるとともに、将来への伝承、継承などが難しくなっている。
さらに最近のゲリラ豪雨の頻発による中小河川の洪水の恐れも急増しているだけに、災害対策としても必要性が高まっている。