血糖値を下げる新しい化合物を発見―糖尿病治療薬の研究開発に朗報:群馬大学/農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年9月15日発表)
今回発見した新規血糖値を低下させる化合物の化学構造式
生体内でGPBAに働く胆汁酸とは、全く異なる化学構造をもつ。
群馬大学と(国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月15日、共同で血糖値を下げる新しい化合物を見つけたと発表した。この化合物は、インスリンの分泌を促進させる方法の研究や、糖尿病治療薬の開発に利用できるとしている。
インスリンは、膵臓から出る体内ホルモンの一つで、血糖値を下げる働きをする。糖尿病は、そのインスリンの作用が十分でないために慢性の高血糖状態になる病気。
国内の糖尿病患者数は、今年9月に発表された厚生労働省の国民健康・栄養調査によると1,000万人に上り、そのほかに「糖尿病の可能性を否定できない」いわゆる予備軍が1,000万人いると同調査は見ている。
研究グループは、血糖値を低下させる新たな化合物を探索するために、「GPBA」と呼ばれるたんぱく質に注目した。
GPBAは、細胞膜上に存在し、全身の多くの細胞にある。中でも膵臓のGPBAはインスリンの分泌促進に関わっていて、GPBAを活性化(反応性を高めること)させる化合物は、糖尿病治療の新薬候補としてこれまでも多くの製薬企業によって研究されてきた。
GPBAを活性化させてインスリンの分泌を多くして血糖値を下げる働きを示す化合物を幅広く探索して見つけ出すためには多量のGPBAが必要で、先ずその“量産”法を開発することが前提となる。
研究グループは、多量のGPBAを生産できるようにすることを目指し、今回カイコにヒトのGPBAの遺伝子を導入してヒトのGPBAを持った遺伝子改変カイコを作ることに成功、多量のGPBAを安定して生産できる方法を開発した。
さらに、GPBAが多数存在しているカイコの細胞膜に化合物を加えた時にその化合物が実際にGPBAを活性化させるかどうかを区別することができる簡便な手法を開発、血糖値を低下させる機能を持った新しい化合物を発見した。
研究グループは、マウスを使って新たに見つけた化合物の投与効果を調べたところ投与してから30分で血糖値が低下することが確認されたとしている。
これまでのGPBAを活性化させる化合物は、胆のうの肥大などの副作用が懸念され、新薬にはなっていない。今回の化合物について研究グループは「副作用を軽減した新たな薬剤の開発が期待できることが示唆された」と発表している。