グラフェンの構造欠陥を見極めることで高性能デバイスへの道がひらかれる:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2017年9月15日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の福本恵紀特任助教は、東京工業大学理学院化学系の腰原伸也教授、フランス国立科学研究センター(CNRS)・ピエール アンド マリー キュリー大学のMohamed Boutchich准教授らと共同で、グラフェンの中を移動する超高速な電子の動きが、場所によって異なることを世界で初めて観測した。
グラフェンが理想的に作られている場合、実は炭素原子は一層に並んだ平面状の構造をしている。炭素は電気を通すが、グラフェンはまさに炭素が一層の膜なので、電子もより高速に移動させることができ、高速デバイスへの応用が期待されている。しかし、実際に作成されるグラフェンの構造はナノスケールで見ると実は不均一である。そのため、実際に利用しようとすると、期待する性能が発揮できない場合も起こりうる。そこで、高性能化に利用ができる構造を明らかにする必要があった。
本研究では、一般的な作成方法で作られたグラフェンを、ラマン顕微鏡を応用したフェムト秒時間分解光電子顕微鏡法を利用し、グラフェンがある形式の結晶構造のときには、電子が伝導電子としてどのくらい時間存在できるかなどのふるまいを、直接観察することに成功した。
これまではグラフェンの構造欠陥がどのようになっているのかが分かり難かったが、今後はグラフェンの構造欠陥を評価することができるようになり、グラフェンの持つ魅力を生かしたデバイスの開発へ道をひらいたと言えよう。