受精時の精子ゲノム再構築に新因子―再生医療への応用も:理化学研究所
(2017年9月20日発表)
(国)理化学研究所は9月20日、ほ乳類の精子が持つ遺伝情報「精子ゲノム」を受精後に通常細胞の核ゲノムに組み換えるのに欠かせない新因子を発見したと発表した。卵子に含まれる「Mettle23」と呼ぶ物質で、受精卵が体を構成するどんな細胞にもなれる分化全能性の獲得にも関与している可能性があるという。今後、再生医療への応用につながることも考えられると期待している。
理研のバイオリソースセンター遺伝工学基盤技術室の小倉淳郎室長、畑中勇輝訪問研究員、眞貝細胞記憶研究室の眞貝洋一主任研究員らの研究グループが発見した。
精子ゲノムは極めてコンパクトな構造をしているため、受精後には卵子のゲノムと結びついて通常の細胞内にある核ゲノムに組み換えられる(再構築される)必要がある。そのため受精したときに卵子内では精子ゲノムに大きな変化が起きるが、詳しい仕組みは未解明だった。
研究グループは今回、受精後に精子ゲノムに起きる二つの大きな化学変化に注目、マウスの受精卵を用いて詳しく解析した。その結果、精子ゲノムの再構築には「Mettle23」と呼ぶ物質が密接に関わっていることを発見した。さらに、この物質は卵子由来の酵素であり、受精時に起きる精子ゲノムの化学反応できわめて重要な役割を果たしていること、またそれが精子ゲノムの再構築を可能にしていることなどがわかった。
精子ゲノム再構築に関与する因子はこれまでにもいくつか発見されているが、まだ多くの因子が不明という。今回、精子ゲノム上に広く分布していると予想される因子が新たに発見されたことで、理研の研究グループは「生命の始まりに関するゲノムの分化全能性獲得機構の理解が進む」と期待している。