福島原発事故後の森林内の放射性セシウムの動態を解明―樹木の葉や幹から土壌表層へ移動:森林研究・整備機構森林総合研究所
(2017年9月20日発表)
(国)森林研究・整備機構森林総合研究所は9月20日、東京電力福島第一原子力発電所の事故後5年間にわたる調査結果をもとに、森林内での放射性セシウムの動態を明らかにしたと発表した。
森林に降下した放射性セシウムは、時間の経過とともに樹木の葉や幹から林床へと移動し、その多くは土壌の表層付近にとどまっている。この調査結果は被災地の森林管理や放射性物質の長期動態予測などに役立てられるという。
調査は福島県と茨城県内の、汚染度の異なる9つの森林を対象に、葉、枝、樹皮、幹材、落葉層、鉱質土壌における放射性セシウムの濃度と蓄積量の変化を調べた。
それによると、針葉樹の葉や枝の放射性セシウム濃度は時間経過とともに急激に低下した。幹材の放射性セシウム濃度は、アカマツで低下、スギやコナラでは増加する傾向が見られた。しかし、樹木の他の部分に比べて低濃度だった。
森林内の放射性セシウムは、時間の経過とともに樹木の蓄積量が急激に低下、その一方で、落葉層と鉱質土壌における蓄積量が増加した。調査開始3年後の2014年以降は森林全体の90%以上が落葉層と鉱質土壌に存在し、その大半は表層0~5cmに存在していた。
これらの調査結果から、原発事故で森林にもたらされた放射性セシウムは樹木から土壌へと移動、その多くは土壌の表層付近にとどまっていることが明らかになったとしている。
今回得られた知見は、今後の森林管理に利用されることが期待されるとともに、林産物の出荷制限解除時期の推定や、林業従事者の被ばく低減化などに役立つという。