北極のブラックカーボンどこから来るのか明らかに―地上ではロシアから、上空ではアジアからが多い:国立環境研究所/海洋研究開発機構
(2017年9月25日発表)
(国)国立環境研究所と(国)海洋研究開発機構は9月25日、共同で北極圏に運ばれてくるブラックカーボン(BC)粒子について独自に開発したモデルを使いアジア、北米、欧州、ロシアなどその発生地域別の割合を明らかにしたと発表した。
BC粒子は、大気中を浮遊する微小粒子(エアロゾル)の成分の一つ。ディーゼルエンジンの排気ガス、石炭の燃焼、森林火災など炭素を主成分とする物質の燃焼によって主に発生し、大気を汚染するほか、太陽光を吸収して大気を加熱、雪や氷の融解を促進させる性質がある。
このため、「短寿命気候汚染物質(SLCP)」と呼ばれ、地球上で最も速く温暖化が進行している北極圏の気候や環境へのBCの影響を明らかにする一環として北極圏に運ばれてくるBCの発生源を理解することが重要かつ緊急の課題になっている。
今回の研究は、それに応えようと独自に開発した「タグ付き全球化学輸送モデル」と呼ぶ世界各地の発生源から排出されたBC粒子の発生、輸送、変質、沈着を計算できるモデルを使って北極圏に到達しているBC粒子の発生地域別の寄与率を明らかにした。
それによると、北緯66~90度の北極圏の地表面付近では、ロシアから運ばれてくるBCが最も多く全体の62%を占め、ヨーロッパからが13%、東アジア8%、シベリア5%、アラスカ・カナダ5%、北米3%、と続いている。
一方、高度5kmの中部対流圏では、それが大幅に変わって東アジアの寄与率が最も大きく41%となり、ヨーロッパ12%、ロシア10%、北米10%、シベリア9%、などとなっている。
また、東アジアで発生したBCは、主にオホーツク海や東シベリアの上空を通って北極圏へ輸送されていることが判明。さらに、東アジアから北極圏への流入が発生する重要な領域が東経130~180度、高度3~8kmにあることが分かったという。
研究グループは「東アジアが中部・上部対流圏のBCに対して最も重要な発生源であることが初めて明らかになった」といっている。