固体中の電子なぜ無秩序に固定?―“ガラス化”のなぞ解明:東北大学金属材料研究所/東邦大学/高輝度光科学研究センター/山梨大学/東北大学多元物質科学研究所/東京大学物性研究所/高エネルギー加速器研究機構
(2017年9月29日発表)
東北大学は9月29日、高エネルギー加速器研究機構(KEK)などと共同で固体中の電子の配置が無秩序なまま固定した「電荷ガラス」ができる仕組みを解明したと発表した。窓ガラスに代表される身近な「ガラス物質」形成の仕組みとも類似点が多く、自然界に現れるガラス化現象の統一的な理解に役立つと期待している。
東北大金属材料研究所の橋本顕一郎助教、佐々木孝彦教授の研究グループが東邦大学や高エネルギー加速器研究機構、ゲーテ大学(ドイツ)など7機関と共同で初めて解明することに成功した。
ガラス状態は、固体と同様に流動性は持たないが、物質を構成している要素の配置が液体と同じく無秩序なまま凍結しているのが特徴。今回、結晶中の電子が無秩序な配置のまま凍結した物質として研究グループが発見した新たな分子性有機導体「θm–(BEDT-TTF)2TlZn(SCN)4」を対象に、ガラス化のメカニズムを詳しく調べた。
その結果、この物質は高温では各分子に正の電荷が均一に分散した電荷液体の状態になるが、170K(ケルビン、170Kは約-103℃)の低温では正電荷同士の反発力によって電荷が周期的に配列した電荷結晶になる。ただ、冷却時の速度を毎分50K以上にすると周期的に配列する暇もなく固まり、電荷の配置が不規則な「電荷ガラス」になることがわかった。X線構造解析などでも、本来最も安定な結晶状態に移る前に、急冷によって準安定状態に落ち込み電荷ガラス状態になったことが明らかになった。
研究グループは「電子のガラス状態が一般的なガラス形成物質と同じメカニズムで形成されていることがわかった」と言っている。さらに、物質中の磁気スピンや電気双極子など自然界に広く存在するガラス化現象一般に対する統一的な理解に役立つとみている。