多様なメソポーラス材料の合成技術を開発―人工光合成材料など新用途開拓に道:産業技術総合研究所
(2017年10月12日発表)
(国)産業技術総合研究所は10月12日、口径2~50nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の細孔が多数規則的に並んだメソポーラス材料の新用途開拓に道を開く新たなハイブリッド型メソポーラス材料合成技術を開発したと発表した。多様な材料を合成でき、触媒、フィルター、人工光合成材料などの開発への応用が期待できるという。
多孔性のメソポーラス材料は大きな比表面積を持つことから、吸着や触媒機能など各種の特性を引き出す様々な工夫が進んでいる。その一つが、細孔壁内でシリカと有機基が分子レベルで交互に配列した有機無機ハイブリッド型メソポーラス材料の開発で、有機基による吸着特性の制御や、細孔表面に金属錯体をつくり光合成を模倣する触媒反応など、多様な研究が進んでいる。
メソポーラス技術の高度化に取り組んでいる産総研は、親水部と疎水部(親油部)を持つ両親媒性有機化合物を利用し、有機架橋ホスホン酸と金属塩化物から非シリカ系の有機無機ハイブリッド型メソポーラス材料を合成する技術をこれまでに開発している。しかし、親水性を上げるのが難しく応用が限られるなどの問題があった。
今回この技術の改良に取り組み、多様なハイブリッド型メソポーラス材料を作り出せる手法を開発、これにより親水性の細孔表面を持つ材料の実現などに成功した。改良のかなめは、金属塩化物との反応が急速に進行する有機架橋ホスホン酸エステルの反応性の調整で、反応性の高いエステル基を減少させて制御可能にした。
この結果、メソポーラス材料の細孔表面の性質に関する設計自由度が向上、従来の疎水性のメソポーラス材料とは異なるメソスケールの化学反応場を持つ触媒材料やフィルター材料、人工光合成材料の開発などへの応用が期待できるという。