グラフェン-メソポーラスシリカ複合体の細孔を制御―分子のふるいや分子薬の移送容器などに応用へ:産業技術総合研究所
(2017年10月13日発表)
(国)産業技術総合研究所は10月13日、炭素原子一層のシート状物質であるグラフェンを、メソポーラスシリカという多孔性薄膜でサンドイッチ状に挟み込み、グラフェン表面に垂直に規則的に並んだメソポーラスシリカの細孔の孔径や深さを制御する技術を開発したと発表した。
分子を細孔のふるいにかけて大きさの違う分子を振り分けたり、細孔に薬物を収容して患部に薬物を送達するといった利用が期待できるという。
グラフェンは鉛筆や黒鉛電極などに用いられているグラファイトを原子一層のシート状に剥離したもので、機械的強度が大きく、すぐれた熱伝導性や電気伝導性、光誘起発熱性、化学的安定性などをもつ。
メソポーラスシリカは均一な孔径の細孔が規則的に並んでいる二酸化ケイ素(シリカ)製の多孔体で、2~10nm (ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の孔径を持つ。両者を組み合わせて複合体をつくることが試みられており、新たな機能の開拓が期待されている。
研究グループは、グラフェン酸化物と界面活性剤、有機シリコン源の水溶液を原料として用い、グラフェン表面の両側に細孔を持つシリカを成長させた。界面活性剤が細孔の鋳型の役目をし、垂直方向に配列した細孔がグラフェン表面に形成される。最後に焼成して界面活性剤を取り除くとグラフェン-メソポーラスシリカの複合体が得られる。
界面活性剤の鎖長を変化させることで細孔の孔径を1nmから5.5nmまで調整でき、複合体を成長させるための反応時間を変化させることによって細孔の深さを制御できる。
研究グループは今後この合成技術を発展させ、分子ふるい型センシングやドラッグデリバリーシステムなどへの応用を目指したいとしている。