竹林の生育域が温暖化によって北上し、北海道まで拡大する:東北大学/長野県環境保全研究所/森林総合研究所ほか
(2017年10月18日発表)
東北大学大学院生命科学研究科と(国)森林総合研究所、気象庁気象研究所などの研究グループは10月18日、温暖化が進行すると竹林の生育域が最大で北海道まで拡大し、里山の生態系に大きな影響を与えるなど脅威になるとの予測を発表した。
日本の竹林面積は15万9,000haで、西日本を中心に大半がモウソウチク(孟宗竹)とマダケ(真竹)で占められている。竹は温暖な地域を好み成長が早い。モウソウチクはタケノコから約1か月で20mもの高さに伸び、周囲の植物への日射を遮り枯らしてしまうことが知られている。
研究グループは東日本のアメダス(地域気象観測システム)設置点の145 か所周辺の竹林の有無などを調べ、気象データや周辺土地利用データから年平均気温と日射量を基に、竹林の生育環境を推定した。
さらに気象研究所の大気気候モデルと、対策が取られなかった場合の温室効果ガス排出シナリオを使い、21世紀末までの生育環境分布の変化を予測した。
これまでの東日本の竹林の生育適地は35%だった。平均気温が産業革命前から1.5℃上昇すると46〜48%に拡大し、2℃上昇では51〜54%と本州北端まで伸び、4℃上昇では最大83%になる。竹が生育していない北海道でも、沿岸部を中心に拡大するとの予測が出た。
モウソウチクもマダケも種子から定着して竹林に成長したとの報告はなく、外来種被害を防ぐ原則の「入れない(持ちこまない)、捨てない(管理放棄しない)、拡げない」を徹底することが必要で、地域住民による管理と対策が欠かせない。
2年前に採択された「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命前の1.5℃に抑えることを努力目標として決めた。この1.5℃目標は、温暖な環境を好む竹林のような外来種の拡散を抑制するためにも意味があるとしている。