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地震発生周期解明の手掛かりとなる計算モデル構築―石英脈形成時間が地震の繰返し周期と相関:産業技術総合研究所

(2017年10月18日発表)

 (国)産業技術総合研究所と東北大学の研究グループは1018日、プレート境界付近における地震発生周期解明の手掛かりとなる計算モデルを構築したと発表した。岩石の亀裂内で石英が析出する時間を算出するモデルで、この計算モデルにより得られる巨大分岐断層周辺での石英脈形成時間が、地震の繰返し周期と相関するという結果が得られたという。

  マグニチュード8を超す巨大地震は100年から1000年オーダーの周期で繰り返し発生しているとされ、こうした地震は断層周辺の流体(水)の圧力が上昇して断層の強度が低下し、断層が滑りやすくなって発生すると考えられている。

 しかし、岩石の力学特性や流体圧の時間変化から地震発生周期を定量的に評価する研究はこれまでほとんどなかった。

 研究グループは、過去に巨大地震が起きたとされる宮崎県の延岡衝上断層の周辺に分布する石英脈に着目、石英の析出速度と地震発生周期との関連性を調べた。

 地殻内部の岩石亀裂中には様々な鉱物成分が溶けた水が移動しており、地震によって圧力や温度が変化すると、それらは鉱物として析出し鉱物脈をつくる。特に地殻に豊富に存在するシリカは岩石亀裂内部に石英を析出し石英脈を形成する。

 今回、研究グループは延岡衝上断層を例に、水の流れによるシリカ成分の移動と石英の結晶成長速度を組み合せた新計算モデルを構築した。このモデルを用いて、シリカが亀裂内部で石英として析出し亀裂を埋めて石英脈となる時間を見積もった。

 その結果、延岡衝上断層で観察される平均サイズの石英脈が形成されるのにかかる時間は6年から60年程度であること、また、比較的大きな亀裂でもほとんどが300年以下で石英脈になるという結果を得た。

 この時間スケールは、南海トラフなど巨大分岐断層で発生する巨大地震の繰返し周期の時間スケールと相関性があり、石英脈形成という地球化学プロセスが地震発生周期に関連するという新しい視点を提示する世界初の成果という。