新たな3次元観測システムで、首都圏の雷の試験観測を開始:防災科学技術研究所
(2017年10月19日発表)
(国)防災科学技術研究所は10月19日、米国から輸入し首都圏に設置した8台の最新型の雷放電経路3次元観測システム(LMA)でとらえた、今年の落雷被害の観測内容を公表した。将来は雷発生のメカニズムの解明や危険度予測手法の開発につなげる。
落雷対策は、建設現場や音楽、花火大会などの野外イベントでの安全確保には欠かせない。精密機器工場では高電圧による製品の破壊を防ぐことが求められ、鉄道や電力会社は停電防止と復旧活動のために雷予測情報に対する期待は大きい。
観測システムは米国LMA テクノロジーズLLC社製で、落雷(地面に対する放電)だけでなく上空の雲の内部や、雲と雲の間の放電(雲放電)経路の観測にも優れ、国際的な研究で基準データに使われた実績がある。
雷放電や、雲放電によって発生した電磁波を複数のVHF(超短波)アンテナで受診し、地震の際の震源を求める手法とよく似た到達時間差法によって放電発生の位置を決める。GPS(全地球測位システム)情報も加えて情報処理をするため緯度・経度、高度、時刻などを3次元的に把握できる。
防災科学研が持つ雨、雪、あられなどの粒子を判別できる先端レーダーのXバンドマルチパラメーター(MP)レーダーの観測範囲に合う領域でつくば市、八王子市など首都圏に8台を設置した。
公表したのは、今年6月16日の北関東各地での激しい落雷による雷放電数の分布図と、8月19日の花火大会が中止された東京・世田谷周辺の2つの観測結果。
6月の観測図では地上の落雷場所はもちろん、高度10kmまで立ち上る積乱雲の中心部分に雷放電経路と位置がくっきりと表示されている。
8月の世田谷・多摩川周辺の落雷では、雷の放電点数が地面に投影した水平分布や、南北方向、東西方向に投影した高度断面図で3次元的に明瞭にとらえている。
今後はこの観測結果を使って発雷指標を作成し、新たな雷危険度予測の開発につなげることにしている。