ホルムアルデヒドの発生を常時監視できるセンサーを開発―シックハウス症候群予防に向けた利用期待:物質・材料研究機構/産業技術総合研究所
(2017年10月23日発表)
(国)物質・材料研究機構と(国)産業技術総合研究所は10月23日、共同で大気中などに放出されるホルムアルデヒドを継続的に検知して常時監視することができる小型センサーを開発したと発表した。シックハウス症候群予防に向けたホルムアルデヒド常時監視システムへの利用が期待される。
ホルムアルデヒドは、水素と炭素と酸素からできている有機化合物。安価なことから広く使われているが、建材などから放出されるホルムアルデヒドの蒸気がシックハウス症候群を引き起こすことで問題となっている。また、発がん性も疑われている。
こうしたことから、世界保健機関(WHO)は、室内のホルムアルデヒド濃度を0.08ppm(ppmは100万分の1)以下に維持管理するよう推奨している。しかし、ホルムアルデヒドを検知するには、高価で大型の装置が必要であったり、小型の装置では測定毎に検出タグの交換がいる、など課題があって常時自動で監視できる簡便な監視システムの開発が求められている。
このニーズに応えようと研究グループは、今回ナノ物質の一種「単層カーボンナノチューブ」を使ってホルムアルデヒドの発生をウォッチするセンサーを実現、常時監視が行える小型装置を試作した。
単層カーボンナノチューブは、超微細な円筒状の炭素ナノ材料で、半導体的な性質を持つものと金属的なものとが混合した状態で合成される。
その両方を分離するのは可能で、新センサーは半導体的な単層カーボンナノチューブだけを分離して使う。
半導体型単層カーボンナノチューブは、酸性や塩基性の物質が触れると応答して導電性が大きく変化することから化学センサー材料として期待されているが、ホルムアルデヒドのセンサーにはならないとこれまでは見られていた。ホルムアルデヒドの分子は中性なので、半導体型単層カーボンナノチューブにそれが触れても導電性がほとんど変わらないからだ。
それに対し研究グループは、ホルムアルデヒドの蒸気がヒドロキシルアミン塩酸塩という物質に触れると発生する微量の塩酸ガスが半導体型単層カーボンナノチューブから電子を奪い取り導電性がアップする現象が生じることを見つけてその壁を突破、ホルムアルデヒドを定量できるセンサーを完成させた。
試作したホルムアルデヒドの常時監視装置は、0.9ppm以上のホルムアルデヒドを検知できることを確認している。
両研究所は、この新センサーと情報通信技術を融合することで、ホルムアルデヒド蒸気の発生を遠隔からリアルタイムで常時監視するシステムが構築できるものと期待しており、「センサー材料のさらなる高感度化を進めることで、WHOが定める基準値(0.08ppm)にも将来対応できると考えている」といっている。