プランク定数を世界最高レベルの精度で測定―キログラムの新たな定義に向けて貢献:産業技術総合研究所
(2017年10月24日発表)
産総研で保管する日本国キロ
グラム原器 (わが国の質量の
国家計量基準であり、国際
キログラム原器と同じ寸法・
材質で作られた分銅。)
©産業技術総合研究所
(国)産業技術総合研究所は10月24日、シリコン単結晶球体の超精密な形状計測を通じて、基礎物理定数の一つであるプランク定数を世界最高レベルの精度で測定し、プランク定数に基づくキログラムの新たな定義改定に向けて大きく貢献したと発表した。
質量の単位であるキログラムは、現在「国際キログラム原器」と呼ばれる分銅の質量で定義されている。しかし、この質量も表面の汚染などによって長期的には変動してしまうことが分かってきたため、基礎物理定数であるプランク定数による定義に移行することが検討されている。
キログラムの質量はプランク定数を用いて、ある数式で表現される。その際に重要なのがプランク定数の値で、国際キログラム原器の質量の長期安定性よりも高い精度が求められる。
今回産総研は、超高精度のレーザー干渉計と表面分析システムを用いて、直径約94mmのシリコン単結晶球体の形状を1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)未満の精度で測定することで、プランク定数を世界最高レベルの精度で測定した。
得られた精度は2.4×10⁻8(1億分の2.4)で、これは1kgに換算すると24㎍(マイクログラム)であり、国際キログラム原器の約100年にわたる質量安定性とされる50㎍を凌(しの)いでいる。各国の研究機関からこれまでに寄せられた8つの高精度な測定値をもとに、科学技術データ委員会(CODATA)が今回、キログラムの新しい定義に用いられるプランク定数の値を決定した。この値の精度は1.0×10⁻8で、1kgに換算すると10㎍となった。
8つのデータのうち4つは産総研が提出したもので、欧米以外の国が単位系の改定に決定的な役割を果すのは長い歴史の中でこれが初めてという。2018年11月に開かれる国際度量衡総会でプランク定数による新たな定義への移行が決議されることになると見られている。