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温暖化で日本南海上の台風は猛烈化―発生数は世界全体で減少へ:気象業務支援センター/気象研究所

(2017年10月26日発表)

 気象庁気象研究所と(一財)気象業務支援センターの研究チームは1026日、地球温暖化が進むと21世紀末には世界全体で台風などの熱帯性低気圧の発生数は約3割減るものの、日本の南海上では最大風速59m/s(メートル毎秒)を超える猛烈な台風の発生が増加する可能性が高いという研究結果を発表した。

 温暖化の進行に伴う台風の発生状況の変化については、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が第5次評価報告書で個々の台風の最大風速や降水量が強まるとの予測結果を示している。ただ、強い台風が地球全体で増えるのか、海域ごとではどうかなどについては、コンピューターによる既存のシミュレーション実験ではわからなかった。

 そこで研究チームは、将来の気候予測の不確実性を考慮して多数のシミュレーション実験結果をまとめたデータベースを活用、台風の発生頻度などが将来どのように変化していくかを高い精度で予測した。その結果、台風は地球全体では減少するものの、ハワイを中心とする北太平洋東部から中部にかけては増加。風速59 m/s以上の猛烈な台風に限ると、日本の南海上からハワイ付近、メキシコの西海上にかけて発生頻度が高くなる可能性が強いことがわかった。

 研究チームは「日本国内だけでなく地球規模での将来の防災対策・適応計画を立案するうえで考慮されるべき結果だ」として、今後の国民生活の安全性を高めるための施策決定などに役立つと期待している。