反応中の電極表面の原子の動きをリアルタイムで観察―燃料電池や蓄電池の性能向上に貢献へ:産業技術総合研究所/科学技術振興機構ほか
(2017年10月25日発表)
(国)産業技術総合研究所と(国)科学技術振興機構(JST)、(国)物質・材料研究機構、東京学芸大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究グループは10月25日、電気化学反応中の電極表面の原子の動きをリアルタイムで観測できる技術を開発したと発表した。燃料電池や蓄電池の性能向上に役立つという。
燃料電池や蓄電池は一般に固体の電極が電解液に漬かっており、固体電極と液体との界面での電気化学反応により、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換が行われる。
変換効率の高い高性能な電池の開発には、この界面での反応機構の理解が重要で、電極表面の反応・変化を原子レベルで観察できる技術が望まれていた。
研究グループは、放射光施設で作られた強力なX線を界面に照射して回折X線の強度分布を測定する表面X線回折法に手を加え、さまざまな波長のX線を一度に照射できる集束X線を界面に当て、各波長の回折X線の強度を一度に計測できるようにした。
単一波長のX線を用いた従来法だと強度の測定に数分以上かかっていたが、新手法だと界面構造に関する情報を1秒以下で得られ、界面構造の変化をリアルタイムに観察できる。しかも観察精度は原子サイズの約10分の1と高い。
燃料電池反応の一つであるメタノールの電気分解が進む様子をリアルタイムで観察したところ、モデル触媒電極として用いた白金単結晶の最表面の原子層の位置変化が観察された。
電気化学反応による電極表面の原子の追跡を実現したのはこれが世界で初めてで、今後は燃料電池電極の劣化過程や、全固体蓄電池などの固体積層デバイスの界面反応過程の観察などにも取り組みたいとしている。