[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

バレイショの雑草化を防ぐための土壌凍結の適切な深さを決定:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年10月26日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業センターは1026日、収穫時に取り残したバレイショの雑草化を防止するには、畑の土壌凍結の深さを30cm前後にするのが最適であると明らかにした。北海道十勝地方での実証試験の成果。最適な深さを調整することで、雑草除去の労力が大幅に省力化でき、翌年以降の収量も期待できる。畑の窒素肥料成分の流出による水質汚染や、温室効果ガス、オゾン層破壊ガスの発生も抑えられて環境負荷を抑えることにも役立つとしている。

 十勝地方は北海道東部の広大な平野にあり、コムギ、バレイショ、マメ類、テンサイを中心に、わが国最大の食料生産地帯として知られる。厳冬期には積雪が畑を覆って地温を保つ働きがある。積雪が少ないと寒風によって地温が奪われて凍結しやすくなる。

 地温が高いと、収穫しそびれた地中の小イモが生き続けて雑草化してしまう。畑の肥料分を吸収するため輪作作物の生育に影響を与え、病害虫の温床にもなることから、農家は「野良イモ」と呼んで被害を恐れていた。野良イモは越冬後に多いところで2万株以上も発生することがある。

 一方で、畑が深く凍ると融雪水が土中に浸透しにくくなるため、春作業の開始が遅れる心配が出てくる。

 農家はこうした対策に、独特の経験と勘(かん)を使い「雪割り」と呼ばれるユニークな畑の凍結対策を生み出した。トラクターとブルドーザーで畑の雪を一定間隔に空けながら除雪する。すると除雪されたところが露出するために、畑の水分が深くまでゆっくりと凍結する。しばらくして雪山部分も除雪することで広大な畑でも全面を凍らせることができる。

 同センターは、こうした経験手法を基にさらに適切に土壌凍結させるには、どのくらいの深さが良いかを実験的に探っていた。その結果、野良イモの発生は凍結が深さ28cm以上になると抑制できることを確認した。

 凍結が浅いと雪解け水が浸透しやすくなり、反対に深いと硝酸態窒素が畑に残りやすくなる。その両方のバランスが良い深さは33cmだった。農業生産性の向上と環境負荷の低減を両立できる凍結の深さは、28cm以上33cm未満と結論づけた。

 雪割による凍結の深さコントロールは日本オリジナルの優れた農業技術であり、新たにオホーツク地方でもこの成果を活かすことを検討している。