コムギの芽に遺伝子を直接打ち込む―主要作物の品種改良に新技術:農業・食品産業技術総合研究機構
(2017年11月8日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構は11月8日、(株)カネカと共同で遺伝子を植物に直接打ち込んで品種改良する技術をコムギで開発したと発表した。表面に遺伝子をコーティングした金の微粒子を芽の先端部に打ち込むことで、これまで難しかったコムギへの遺伝子導入に成功した。これまで遺伝子導入の障害となっていた細胞培養などのプロセスが不要なため、遺伝子導入によるコムギの新品種開発が加速するとしている。
開発したのは、金微粒子の表面に遺伝子DNAを付着させ、高圧ガスで植物細胞に打ち込む「パーティクルボンバードメント法」。培養細胞を用いる技術は従来から知られているが、今回初めて植物個体に直接打ち込む技術を開発、遺伝子導入が難しいとされていた「ゆめちから」や「春よ恋」など国産の主要実用品種にも適用できることを確認した。
研究グループは、まず植物の芽の先端部にある生長点にL2層と呼ばれる細胞層があることに注目。花粉や卵細胞などの生殖細胞はこのL2層から生まれると考えられているため、ここに遺伝子DNAを打ち込めば、難しい細胞培養をしなくても打ち込んだ遺伝子が次世代に受け継がれて新品種開発につながると考えた。
新しい遺伝子導入法をiPB(インプランタ・パーティクルボンバードメント)法と名付け、まず実験用のコムギ品種「Fielder」で遺伝子導入を試みた。その結果、このコムギを親として生まれたコムギ個体の0.9%が導入された遺伝子を持っていた。さらに実用品種「春よ恋」でも、同じく0.7%が遺伝子を持っており、コムギの新品種開発に有効であることがわかった。
新手法について、農研機構は「ダイズやトウモロコシなどコムギ以外の作物にも適用可能」とみており、これらの作物の品種改良へも利用されることを期待している。