6,600万年前の小惑星衝突による恐竜絶滅で新たな解析結果―衝突場所により発生する、すすが引き起こす気候変動の規模変わる:東北大学/気象研究所
(2017年11月9日発表)
東北大学大学院理学研究科の海保邦夫教授と気象庁気象研究所の大島長主任研究官は11月9日、共同で約6,600万年前に小惑星が地球に衝突し恐竜などが絶滅したと見られていることについて、堆積岩中の有機物量が多い場所に衝突したため有機物の燃焼により発生した膨大な量のすすが気候変動を引き起こし、それによって恐竜などの大量絶滅が起きたもので「6,600万年前の小惑星の衝突した場所が少しずれていたら、恐竜などは絶滅せず、中生代の生物の世界が今も続いていたかもしれない」とする研究成果を発表した。
この論文は、11月9日付けで英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
約6,600万年前の白亜紀末に直径10km程度の小惑星がメキシコのユカタン半島付近に衝突し、地球上の恐竜など75%以上の動物の種が絶滅したとされているが、両氏は今回の研究で小惑星の衝突場所によって発生するすすが引き起こす気候変動の規模が変わり、直径10km程度の小惑星が衝突しても常にそのような大量絶滅が起こるとは限らないことが分かったといっている。
太陽系には、地球などの8つの惑星以外にもサイズの小さな天体が存在する。小惑星は、その小さな天体のことで、数多くの地球近傍小惑星(NEAs)が見つかっているが、今を去る約6,600万年前その一つが地球に衝突したとされている。
海保教授らの研究グループは、昨年7月今回の発表の元となる研究成果を発表※しているが、それをさらに深め、小惑星衝突当時の堆積岩中の有機物量の地球上の分布や、気象研究所の気象モデルを使っての計算により成層圏中のすす量に応じた気候変動を調べるなどして裏付けを行った。
今回、海保教授は、白亜紀末にすすの元になる炭化水素を多く含む堆積岩が大量に存在していたと推定される地域の分布を世界地図上に再現、陸地から大陸棚に及ぶその量を推定した。
その結果、堆積岩中の有機物量は場所によって3桁も異なり、少ない量の地域が大部分を占めていたことを突き止め、有機物量の多い地球表面の13%の範囲内にあるユカタン半島に小惑星が衝突したために動物の種の大部分がいなくなる大量絶滅が起こった、という結論に至ったとしている。
小惑星の衝突で大気中に太陽光を遮る膨大な量のすすがまき散らされたことによる寒冷化については、陸域と海上を合わせた地球全体の月平均気温が最大で8〜11℃程度低下したものと推定している。
※昨年7月発表の記事「恐竜の絶滅は小惑星衝突で発したすすが原因」はこちら