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害虫の殺虫剤抵抗性を遅らせる農薬の使い方にめど:農業・食品産業技術総合研究機構

(2017年11月14日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は1114日、殺虫剤が効かなくなる抵抗性害虫の出現を抑えるために様々なケースを想定して試したところ、作用部位や致死効果の違う複数の殺虫剤を同じ世代内で使う「世代内施用」が、多くの場合で効果的との結論に達した。実際に室内実験や農場で有効かどうかを検証し、有効成分をより長く使い続けられる殺虫剤の開発に役立てる。

 同じ殺虫剤を長く使い続けると、害虫が抵抗性を持って効かなくなることが知られている。

 例えばキャベツやブロッコリーなどの野菜につくガの一種コナガでは、新しく開発された殺虫剤でも、10年から20年のうちに害虫が抵抗性をもって効かなくなる。

 殺虫剤には、神経系に効くものや、ホルモンを狂わせて成長を邪魔するもの、致死効果が違うものなどがあり、それぞれ効き目や部位が異なる。これを作用機構と呼んでいる。

 農研機構は、殺虫剤のタイプや使用する時期、害虫の交尾行動の違いなどによってどのような影響が出るかを56通りの組み合わせで実施し、抵抗性を遅らせることができるかを調べた。複数種の害虫が関与する農場を想定した網羅的なシミュレーションを実施した。

 移動時期は、成虫になると(殺虫剤を使った)農場から(殺虫剤のない)広い野外との間を行き来するため、交尾期を境に4パターンを想定。殺虫剤にさらされる時期を、幼虫期、交尾前の成虫、交尾後の成虫など7パターンを想定した。さらに害虫の世代ごとに抵抗性遺伝子が増え、集団の半分を占めるまでに要する世代数(時間)を調べた。

 その結果、チョウ類では同じ世代に2種類の殺虫剤を組み合わせて使うと、現在広く実施されている複数の世代ごとに殺虫剤を入れ替える「世代間交互施用」よりも、数10倍~100倍も遅らせることがわかった。

 全ての組み合わせで比較しても、作用の違う複数の殺虫剤を1世代内で使った方が、害虫が抵抗性を持つことを防ぐ効果の高いことが分かった。