南硫黄島で発見の幻のランの開花に成功:国立科学博物館ほか
(2017年11月17日発表)
国立科学博物館筑波実験植物園は11月17日、6月に小笠原諸島南硫黄島で発見し種類が不明であったランを、栽培によって初めて開花に成功させたと発表した。遺伝的特徴などからシマクモキリソウと確認。絶滅したと思われていた幻のランを79年ぶりに発見した。筑波実験植物園で開催中の「つくば蘭展」で11月26日まで限定公開された。
東京都、首都大学東京、日本放送協会(NHK)が連携し、今年6月13日から16日間、南硫黄島で植物や鳥類、昆虫などの自然環境調査を実施した。
同島は急峻な地形や自然な環境の厳しさから人の定住がなく、自然環境保護法で立ち入りが禁止され、最も原生の自然が保たれていた。研究者の踏査調査のために東京都レンジャー(自然保護指導員)が山頂ルートを開拓中にこのランを発見した。
島の標高700m付近の雲や霧が頻繁に発生する地帯から3株を採取し、ラン科植物の専門家のいる筑波実験植物園に栽培を委託していた。
採取した株からDNAを抽出し解析した結果、日本の冷温帯を中心に分布する近縁のスズムシソウやセイタカスズムシソウと比べると、花色と開花期が異なる。
開花したランは高さ約12cm、長さ9cmの葉を2枚付け、株の中心から伸びた花茎に長さ1cmの花を7輪つけていた。