西シベリア上空のメタン濃度高度によって上昇度に差異―20年以上にわたり航空機使って観測し判明:国立環境研究所ほか
(2017年11月21日発表)
(国)国立環境研究所と(国)海洋研究開発機構、東北大学は11月21日、西シベリア上空のメタンの濃度増加の程度が高層と低層で違っていることが判明したと発表した。ロシア科学アカデミー、ロシア水文気象環境監視局と共同で航空機を使い20年以上にわたる観測を行って得た。
西シベリアは、ウラル山脈からエニセイ川までの広大な地域のことで、メタンガスが発生する世界最大の湿地帯が存在し、石油や天然ガスの掘削・生産に伴うメタンガスの漏出が生じていることも知られている。
メタンは、最も単純な構造の炭化水素で、温暖化効果が大きいことから地球温暖化の原因物質として世界的に排出低減が求められている。それに対応する一環として環境研などの研究グループは、定期的な大気サンプリングを西シベリア北部のスルグート周辺などで行い温室効果ガスの変動を明らかにしようとメタン濃度を測ってきた。
その方法は、スルグート周辺の湿地帯とノボシビルスク周辺のタイガと呼ばれる針葉樹林帯の高度0.5〜7kmの大気をガラスフラスコに採取し、それを環境研の地球環境研究センターに持ち帰りメタンの濃度をGC—FID法という測定法で計測するというもので、1993年から続けてきた。
今回これまでの測定データを解析し発表したもので、観測初期の1995年から1999年にかけては、高度5.5kmのメタン濃度より高度1kmの濃度の方が64プラス・マイナス5ppb(1ppbは10億分の1)高かったが、2002年から2006年にかけての5年間ではそれが46プラス・マイナス3ppbになり、更に2009年から2013年では37プラス・マイナス3ppbにまで下がっていたことが判明。高度5.5kmにおいても1kmにおいてもメタン濃度は増加しているが、その濃度増加の程度は高層と低層で違っていることが分かった、としている。
地球全体の沿岸域のメタン濃度は、2000年から2006年にかけ上昇が停滞し、その後また上昇していることが報告されているが、環境研は「西シベリアのメタン濃度は変動が大きいが、長期的な変動としては同様な停滞と上昇を示している」といっている。