死んだ細胞を取り除く仕組み解明―難病の治療法開発に手がかり:筑波大学
(2017年11月22日発表)
筑波大学は11月22日、体内で不要になった毎日3千億個もの死んだ細胞が自動的に取り除かれる仕組みを解明したと発表した。細菌などの外敵を食べて処理する免疫細胞のマクロファージが死んだ細胞を処理対象として識別するのに、特定のたんぱく質「MafB」が重要な役割を果たしていることを突き止めた。この仕組みに異常が生じると難病の自己免疫疾患を発症することが知られており、その治療法の開発にもつながる。
生体内で不要になった細胞は、もともと細胞に組み込まれたプログラムに従ってアポトーシスと呼ばれる細胞死を起こす。このとき細胞表面に現れる構造変化を「イートミー(私を食べて)」信号としてマクロファージが認識、死んだ細胞を効率よく処理することがわかっている。ただ、その信号を認識する詳しい仕組みについては十分解明されていなかった。
そこで筑波大の濱田理人助教、高橋智教授らの研究グループは今回、マクロファージ内で作られるたんぱく質「MafB」に注目。遺伝子工学的な手法でマクロファージ内だけでMafBを作れないマウスを作製し、その役割を調べた。
実験では、新たに作製したマウスのマクロファージを培養、細胞死を起こした細胞を加えてみたところ、このマクロファージは死んだ細胞を識別して食べることができなかった。さらにこのマクロファージを詳しく調べたところ、イートミー信号を見分けるために必要な特別なたんぱく質「C1q」を作る遺伝子の働きが極端に減少していた。
このことから、研究グループは「MafBはC1q遺伝子の働きを直接制御し、マクロファージが死んだ細胞を食べる働きを促進させている」と判断、この仕組みが自己免疫疾患を抑制する働きをしているとみている。また、同様の制御の仕組みはゼブラフィッシュやヒトの細胞でも確認できるため、免疫系が魚類からほ乳類までどのように進化してきたかを探る上でも重要な成果になるという。