高性能な強誘電体に潜むフラクタル性を解明―自己相似的に類似した構造の揺れを確認:島根大学/量子科学技術研究機構/岐阜大学/大阪府立大学/筑波大学ほか
(2017年12月13日発表)
島根大学と(国)量子科学技術研究機構、筑波大学などの研究グループは12月13日、強誘電体の中でも特に優れた性能を持つ「リラクサー強誘電体」と呼ばれる物質に潜むフラクタル性を解明したと発表した。リラクサー強誘電体の高い性能の本質に迫る成果という。
強誘電体は、電気を一時的に蓄えたり、電気を音や振動に変えたりする電気部品などに広く用いられている物質で、コンデンサー、圧電素子、センサーなどは代表的な製品。その中で近年、高性能な強誘電体としてリラクサー強誘電体が注目され、誘電率や圧電係数などに関する高い性能の本質の解明が求められていた。
リラクサー強誘電体はナノサイズの分極領域が不均質なパターンを形成することによって高い性能が実現されることが知られている。この不均質な構造は原子レベルからミリメートルまで様々な大きさを持つとともに、さまざまな速さで動くといった現象がある。
研究グループは今回、電子顕微鏡観察と放射光(X線)散乱計測によって不均質な構造を調べ、光散乱計測を用いてその構造の動きを調べた。
その結果、原子レベルから100nm (ナノメートル、1nmは10億分の1m)にわたって自己相似的に類似した構造が揺れていること、すなわち「フラクタル性」を持つことが、構造とその動きの両面から初めて観測され、確認された。
フラクタルはロシアの民芸品マトリョーシカのように、自分の図形の中に自分自身と相似(自己相似)な図形を内包している構造を指す。同じ強誘電体物質でも構造が均質で性能が低いものにはフラクタル性は認められなかったという。
今回の成果はリラクサー強誘電体の高い性能の解明に向けた大きな一歩であり、世界中で進められている鉛を含まず、より安全な強誘電体の開発への貢献が期待されるという。