マスクメロンの全遺伝子発現情報をデータベース化―高級品種で実現、インターネット上で公開:筑波大学
(2017年12月8日発表)
筑波大学は12月8日、高級メロンとして知られるマスクメロンの全ての遺伝子発現情報をデータベース化してインターネット上で公開したと発表した。
メロンは、スイカと同じ瓜科に属し、マスクメロンは球状をした果実の表面に網目模様がついているのが特徴で、麝香(じゃこう)のような香りがするとしてムスク(musk:麝香)から名が付けられたといわれている。
遺伝子発現とは、生物の設計図である遺伝子に書き込まれている情報が細胞の構造や機能に変換される過程をいう。
公開したのは、マスクメロンの中でも味が良いことで知られる高級品種「アールスフェボリット」の遺伝子発現情報のデータベース。
アールスフェボリットは、大正時代に英国から導入され、その後国内で品種改良が重ねられて様々な品種が開発され、現在では専用温室などを使って環境を制御して春系、夏系、秋系、冬系と年間を通しての周年生産が行なわれるまでになっている。
筑波大は、その内の一種「アールスフェボリット春系3号」を実際の農業生産現場と同様のハウス栽培環境で育成して、根、茎、葉、果実部を含む全30の組織からトランスクリプトーム情報(遺伝子発現情報)を取得、全27,427遺伝子を発現パターンに応じて分類することに成功し、データベース化した。
高等植物のゲノム(全遺伝情報)には、一般にDNA(デオキシリボ核酸)の配列が互いに類似した「ホモログ」と呼ばれる遺伝子群が存在する。育種や品種デザインでは、そうしたホモログの機能的な違いや類似性を見分ける必要が生じるが、その機能的な違いを分類できることも示したとしている。
ゲノムに関する情報は、新しい品種の開発などにおいて今や必要不可欠な知見となってきている。データベースの開発は、国内の育種家や研究者などに有用な知見をもたらすだけでなく、「世界的な情報発信ハブとしてのプレゼンス確立に重要な意味を持つ」と研究グループは見ている。
筑波大は、併せて遺伝子発現情報を解析するためのアプリケーションツールも公開しており、「アプリケーションツールの公開によって幅広い研究者、育種者が情報にアクセスできるだけでなく、メロン研究における世界的な中核データベースサイトとしての貢献が期待される」といっている。