イチゴ苗病害虫を蒸気で防除―装置小型化で省電力・低コスト化:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2017年12月13日発表)
(国)農研機構は12月13日、イチゴ苗の病害虫を農薬なしに水蒸気の熱で一度に駆除する小型装置を開発したと発表した。イチゴ農家が持つ既設のプレハブ冷蔵庫内に設置できるため、低コストで約千株の苗を1時間で処理できる。既に7月から販売会社を通じて誰でも手に入れられるという。
農研機構は病害虫に化学農薬が効きにくくなってきている問題に対処するため、(株)FTHと共同で一定温度以上の水蒸気をイチゴ苗に当てることで病害虫を防除する装置の開発を進めてきた。ただ、これまでは装置が大型で消費電力や価格の点で問題があった。そこで今回、福岡県など6機関と共同して小型化に取り組んだ。
新装置は縦横高さがそれぞれ54、50、140㎝、重さ約30kgと小型で、イチゴ農家の1~1.5坪のプレハブ冷蔵庫内に設置できる。従来の装置では蒸気を当てる処理庫もついていたが、新装置では既設のプレハブ冷蔵庫を活用できるようにした。その結果、1回に約千株の苗が処理できる小型装置が実現でき、消費電力も約70%低下した。
新装置は、三相交流(200V、30A)に対応したコンセントがあれば新たな電源工事無しで設置できる。プレハブ 冷蔵庫に1~2か所穴を開け、庫外の制御盤との接続ケーブルを通すだけで簡単に設置可能という。プレハブ冷蔵庫は接続ケーブルを取り出せば、そのまま元通りに使用できる。
研究グループは、イチゴ苗を処理する際に50℃の蒸気を10分間かけることを推奨するマニュアルも作成した。この条件でイチゴの葉は蒸気によるダメージを受けるが、その範囲は葉の面積の20%以下で、イチゴの生産にはほとんど影響しないという。天敵を用いた防除や殺虫剤の一つである気門封鎖剤と併用すれば、病害虫(ナミハダニ、うどんこ病)の年内発生をほぼゼロにできるという。
農研機構は「天敵などを組み合わせた防除によって、さらなる減化学農薬を進められる」として、今後はイチゴ以外の種苗への応用も検討する。