放射性セシウムによる樹木汚染―カリウム肥料で抑制:森林総合研究所
(2017年12月21日発表)
(国)森林総合研究所は12月21日、新たに植えた樹木が土壌中の放射性セシウムで汚染されるのを抑える技術を開発したと発表した。土壌にカリウム肥料を撒くことで放射性セシウムの吸収量削減に有効なことを、福島原発事故後にヒノキの苗を植えて確認した。将来、被災地での林業再開に役立ちそうだ。
2011年の福島原発事故は環境中に大量の放射性物質を放出。特に放射性セシウム137は放出量が多く、半減期も約30年と長いため長期的な影響が心配されている。放射性セシウムは樹木には吸収されにくいが、林業再開にあたっては樹木中の放射性セシウム濃度をより低くすることが望ましい。
このため森林総研は、被災地の福島県川内村で事故後の2014年6月に事故の影響を受けていない3年生のヒノキ苗を植えた。植栽地域を8地区に分け、2014年8月とその翌年の4月の二回にわたって、4地区には1ヘクタール当たりカリウム83kg相当の塩化カリウム肥料を撒き、残りの4地区には何も撒かなかった。
その後、2015年10月に苗木の各部位の放射性セシウム濃度を調べた。その結果、肥料を撒いた場所の苗木は、何も撒かなかった場所の苗木に比べて、放射性セシウム濃度が針葉で約8分の1、茎や枝、根では4分の1以下に低く抑えられていた。
土壌中のカリウムのうち植物などが吸収できるものを「交換性カリウム」と呼ぶが、今回の実験ではその濃度が低いほど樹木は放射性セシウムを吸収しやすいことが確認できた。反対に、カリウムを撒いて土壌中の交換性カリウムを増やすことが、樹木の放射性セシウム汚染の抑制に有効であることが裏付けられたという。
森林総研は、今後も引き続き植栽したヒノキを長期的に追跡調査してカリウムによる効果の持続性を検証したいとしている。