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機能性材料の不純物原子の位置決定に世界で初めて成功―高機能な新規材料開発にはずみ:熊本大学/高輝度光科学研究センター/広島市立大学/富山大学/高エネルギー加速器研究機構ほか

(2017年12月28日発表)

 熊本大学、(公財)高輝度光科学研究センター、広島市立大学などの国内外9大学・研究機関の研究グループは1228日、機能性材料の性質決定に不可欠な不純物の原子位置決定に世界で初めて成功したと発表した。

 今後、機能性材料に含まれる不純物の役割を、原子配列の面から解明することが可能となり、新規材料開発にはずみがつきそうだという。

 一般に高機能な高性能材料は微量な異種元素(不純物)の添加や混入で特異な性質が生み出されていることが多く、添加元素(不純物)が原子の構造に与える影響の理解が極めて重要になっている。

 これを調べる手段としては、これまでX線や中性子を用いた回折法や、X線吸収微細構造分光(XAFS)という方法が用いられてきたが、三次元的な配列観測は困難であるなどの問題があった。

 研究グループは今回、放射光X線を用いた蛍光X線ホログラフィーという手法とX線吸収微細構造分光とを組み合わせ、蛍光X線ホログラフィーのデータにスパース・モデリングという最新の解析手法を適用し、これまでの回折実験では求めることができなかった不純物の位置の同定を正確に行うことに成功した。

 実験では、新しいコンピュータ材料として注目されているトポロジカル絶縁体のテルル化ビスマスを対象に不純物の位置決定を試みた。トポロジカル絶縁体は内部が絶縁体で表面は電気抵抗がゼロになる物質。テルル化ビスマス自体は絶縁体ではないが、遷移金属のマンガンなどを添加すると、その添加位置によってトポロジカル絶縁体になる。これをもたらしている不純物の位置を極めて正確に求めることができたという。

 今後新手法を用いると、添加元素によって性能を制御する半導体材料や磁性材料などの機能を解明できるとともに、新規材料開発に新たな指針を与えることが期待されるとしている。