植物の低温ストレス応答の仕組みを解明―細胞内のカルシウムイオン上昇の原因明らかに:筑波大学ほか
(2018年1月11日発表)
筑波大学と東京学芸大学は1月11日、植物が低温ストレスを受けた時に生じる一過的な細胞内のカルシウムイオン濃度上昇の仕組みを共同で解明したと発表した。
植物には、機械的な刺激や植物ホルモンなどの刺激を受けると細胞内のカルシウムイオンの濃度が一過的にアップする性質がある。
植物が低温にさらされた時も同様にカルシウムイオン濃度の一過的上昇が起きることがこれまでの先行研究で示されており、低温ストレスによる細胞内の一過的なカルシウム濃度の上昇が低温環境に次第に適応するようになっていく、低温ストレス順化の引き金になっているものと考えられている。
しかし、低温ストレスによりどのような仕組みで植物細胞内のカルシウムイオンの一過的上昇が引き起こされるのかは、これまで分かっていなかった。
今回、筑波大生命環境系(つくば機能植物イノベーション研究センター)の三浦謙治教授と東京学芸大教育学部生命科学分野の飯田秀利名誉教授らの研究グループは、植物の細胞膜にあるカルシウムチャネルMCAと呼ばれるたんぱく質に注目、このたんぱく質が低温ショック時における一過的な細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に関わっていることを実験で突き止めた。
カルシウムチャネルMCAは、細胞の外のカルシウムイオンを細胞内に選択的に透過させる機能を示し、研究グループはMCA1とMCA2を生成することのできない突然変異体を用いて低温ストレス時における細胞内カルシウム濃度の一過的な上昇を測定した。その結果、変異体では細胞内カルシウム濃度の上昇が十分に起きず、通常の野生型株と比較して上昇の程度が低いことが発見され、MCAが低温ストレス応答に関与していることが示されたという。