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害虫の殺虫剤抵抗性は共生細菌を介して急速に発達する:産業技術総合研究所/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2018年1月18日発表)

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ダイズ害虫のホソヘリカメムシ
©産業技術総合研究所

 (国)産業技術総合研究所、(国)農業・食品産業技術総合研究機構、沖縄県農業研究センターの共同研究グループは1月18日、土壌中の殺虫剤分解菌が感染した害虫カメムシは、従来考えられていたよりも急速に、殺虫剤抵抗性が伝わると判明した、と発表した。本研究成果は、殺虫剤抵抗性害虫の発生を未然に防ぐ技術の開発に貢献すると期待されている。

 以前から産総研では、ダイズやアズキの害虫であるホソヘリカメムシが殺虫剤を分解できる土壌細菌バークホルデリアに感染すると、殺虫剤抵抗性を獲得することを発見していた。今回はどれくらいの頻度で殺虫剤を使うと、土壌中のバークホルデリアが蓄積し、バークホルデリアに感染したカメムシが増えるのかを調べた。

 今回、殺虫剤の散布頻度とホソヘリカメムシへの殺虫剤分解菌の感染頻度との関係性を明らかにするために、植物苗用のポットに土壌を詰め、殺虫剤フェニトロチオン(MEPを週に1回の頻度で散布した。散布前後の土壌で細菌の群集構造を解析し、またその土壌で飼育したカメムシ幼虫の殺虫剤分解菌感染頻度を比べた。殺虫剤散布前はカメムシの腸内に殺虫剤分解菌は検出されなかったが、6回殺虫剤を散布すると92%のカメムシが殺虫剤分解菌に感染することが分かった。さらに驚いたことに、たった2回の散布でも殺虫剤分解菌に感染したカメムシが現れていた。このときの土壌中の殺虫剤分解菌の割合は細菌群集全体のわずか0.04%にもかかわらず出現しており、殺虫剤分解菌の感染は非常に高い効率で起きていた。

 また、数十年にわたり、年に数回の頻度で継続的に殺虫剤MEPを利用してきた南西諸島のサトウキビ畑において、土壌とカンシャコバネナガカメムシ(サトウキビの重要害虫)の調査を行なった。全体的な傾向としては今回の室内実験と同様に、土壌中の殺虫剤分解菌の密度が高い畑ほど、殺虫剤分解菌に感染した害虫カメムシが多いことが示された。

 従来、害虫の殺虫剤抵抗性は、徐々に集団中の抵抗性個体数が増加して、何世代もかけてゆっくりと発達すると考えられてきた。しかし今回、害虫の殺虫剤抵抗性が土壌中の共生細菌を介して急速に発達することが初めて示された。また様々な要因に結果が左右されうる野外環境でも室内環境と同様の傾向が見られたことから、野外環境でも殺虫剤の連続散布によって、共生細菌による害虫の急速な殺虫剤抵抗性獲得が起こりうると考えられる。今回の成果は、殺虫剤抵抗性害虫の発生を未然に防ぐ新たな害虫防除技術の開発につながる可能性があると、期待されている。