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カビが伸びて成長する仕組みを解明―超解像顕微鏡を使い可視化して実現:筑波大学/科学技術振興機構

(2018年1月25日発表)

 筑波大学と(国)科学技術振興機構(JST)は125日、カビが伸びて成長する仕組みを超解像顕微鏡を使って解明したと発表した。

 カビ(糸状菌)は、菌糸という糸状をした細胞を伸ばして成長している。研究グループは、これまでの研究で菌糸を伸ばすときに起きる化学反応や酵素の分泌が菌糸先端部で起こり、それを周期的に繰り返して菌糸が伸びていくことを見つけ発表している。今回の成果はそれに続くもので、菌糸の細胞壁を合成する酵素に着目して菌糸が伸びるダイナミックな様子を超解像顕微鏡という最新のイメージング技術を用いて可視化することに成功、カビが伸びる仕組みを明らかにした。

 普通の光学顕微鏡は、物理の法則によって光の波長の半分より小さいものを見ることができない。光が物体の裏側に回り込んでしまう回折という現象が起きてぼやけてしまうためで、最も短い波長を用いても200300nm(ナノメートル、1nm10億分の1m)が限界で、それより細かい構造を解像できない。

 それに対し今回使った超解像顕微鏡は、光学顕微鏡の回折限界を遥かに超える解像力を持っている。

 物質には、エネルギーを吸収すると光を出すものがある。その光のことを蛍光と言い、超解像顕微鏡は、蛍光を1つずつ光らせる技術と、蛍光標識した分子の位置をnmの精度で計測する技術とを組み合わせて作られた装置。これを開発した米国とドイツの3人の研究者は2014年のノーベル化学賞を受賞している。

 今回の研究は、古くから遺伝学の研究対象になっている「アスペルギルス・ニドランス」というコウジカビの仲間が伸びる様子を解像度が従来の光学顕微鏡の約10倍(30nm)の超解像顕微鏡を使って可視化し観察するという方法で行った。

 その結果、幅が約2µmの菌糸の先端の約100nmの限られた部分に細胞壁の主要構成成分の1つであるキチンを合成するキチン合成酵素が一時的に集中して局在し、その領域付近で部分的に細胞が伸び、そのような微小部位の位置が少しずつ変化することにより細胞が徐々に伸びているのが分った。

 研究グループは「これまで観察できなかったキチン合成酵素の細胞内での高速な輸送を観測することに成功した」といっている。