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単一の蛍光色素から4色の光出すことに成功―発光マイクロ球体を開発して実現:筑波大学

(2016年7月4日発表)

 筑波大学は7月4日、一種類の蛍光色素から4色の光を発することができる発光マイクロ球体を作製したと発表した。

 筑波大学数理物質科学研究科、数理物質系とデュースブルグエッセン大学(ドイツ)、(国)物質・材料研究機構の研究グループが協力して開発した。

 光を閉じ込めて共鳴させ特定の波長の光を放出する装置のことを光共振器という。

 開発したのは、ポリマー球体光共振器と呼び、光を吸収して発光する蛍光色素分子を一種類だけ添加したマイクロポリマー球体から緑、黄、橙(だいだい)、赤の4色の蛍光を発生させることができる。

 光共振器は、レーザーや光スイッチ、光導波路など多くの光デバイスで重要な役割を担っている。

 中でもポリマー材料からなる光発振器は、溶液プロセスで簡単かつ低コストで作製可能なことから近年活発に研究開発が進められ、その一つに蛍光色素を添加した今回のようなポリマー球体光共振器がある。

 しかし、発光波長は、添加する分子の蛍光特性に依存するため、多色の発光を示すポリマー光共振器を作製するにはそれぞれの蛍光波長を示す複数の蛍光色素分子を用意してそれぞれを添加する必要があった。

 今回の成果は、その壁を破ったもので、使う蛍光色素分子はホウ素ジピリンの誘導体一種類だけ。ポリスチレンへの添加濃度を変えるだけで緑、黄、橙、赤の4色の蛍光を発生させることに成功した。

 また、4色の発色光を示すマイクロ球体共振器を複数個連結して球体間の光の伝搬と波長変換特性について調べたところ、緑から黄、緑から橙、緑から赤への発光色変化を伴う光の伝搬が高効率で起こることが分かった。

 筑波大は、この新ポリマー球体光共振器について、発光変調レーザーや光集積回路、光導波路などへの利用が期待されるといっている。