ナノポーラス合金に新しい作製技術―化学薬品使わず環境負担低減も:東北大学/産業技術総合研究所
(2018年2月2日発表)
東北大学と(国)産業技術総合研究所は2月2日、ナノメートル(1nmは10億分の1m)単位の極微の孔が無数に開いた「ナノポーラス合金」を作製する新しい技術を開発したと発表した。化学薬品などを使わずに作製でき、従来課題とされていた環境への負担や安全性で問題が少ないのが特長。触媒やエネルギー貯蔵など幅広い分野に応用できるナノポーラス合金の開発に新たな道を開くと期待している。
東北大の陳明偉教授らが産総研と共同で開発したのは、複数の金属を溶融させて合金を作る際に気化しやすい金属元素から順に気泡として抜けていく現象を利用する気相脱合金法。気泡が抜けた跡が凝固後にナノ単位の極微の孔として残り、スポンジ状の構造を持つ合金が出来上がる。
研究グループは、コバルトと亜鉛が高温で溶融状態になったときの蒸気圧、つまり気化のし易さが互いに大きく異なる点に注目、両元素による合金づくりを試みた。いったん両元素を混ぜて加熱・溶融してコバルト亜鉛合金を作製、その後で加熱処理を進めることで合金中から亜鉛を優先的に気化させてナノポーラス合金を作る条件を探った。
実験では、気圧100Pa(パスカル、約1,000分の1気圧)の真空環境下で20分間、絶対温度773K(ケルビン)(約500℃)という高温で加熱処理した結果、ナノ単位の孔の開いたナノポーラスコバルトが得られた。さらに、この加熱処理の時間や温度、圧力を変えることで、孔のサイズをナノメートルからマイクロメートル(1µmは100万分の1m )の範囲で自由に制御できることも分かった。
ナノポーラス合金は重量当たりの表面積が極めて大きく、高い導電率や熱伝導率を示す三次元のネットワーク状のナノポーラス構造を持っている。そのため触媒やエネルギー貯蔵、エネルギー変換などに広く応用が期待されている。ただ、これまでは電気化学的に特定の元素を溶解させるなどしてナノポーラス構造を作るため、製造過程で化学廃棄物が出るなどの問題があるとされていた。