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カーボンナノチューブを使った隙間充填剤を開発―電波漏れや干渉を防ぐ電子機器のセキュリティー対策に効果:産業技術総合研究所

(2018年2月8日発表)

 ()産業技術総合研究所は28日、電子機器からの電波漏れや、外部からの電波の侵入を防ぐための新たな隙間の埋め合わせ材を開発したと発表した。金属との密着性が良く、すき間への塗り込みが簡単にでき、常温で固まり、割れにくい特長がある。増加している通信用の電子機器の情報漏洩や誤動作の防止に役立つ。

 電子機器の急増と共に、外部からの電波によって誤動作が起きる心配や、電子機器が自ら出す電波が外部に漏れて情報漏えいする危険性が高まっている。

 この対策には電子機器の置かれた部屋の床や壁、窓、扉などを電波シールド材で囲う必要があるが、細かいつなぎ目などに隙間ができると電波が漏れたり侵入したりする盲点があった。

 開発したのは産総研のナノチューブ実用化研究センターと電子光技術研究部門、物理計測標準研究部門のグループ。

 常温で固まる液状ゴムに、高純度単相カーボンナノチューブを添加材として分散させた。カーボンナノチューブ自体は電気を通し易いため、電波のシールド効果が高い。

 金属などの遮蔽材の隙間や溝に、よく密着するように塗布し充填する。固まった後は電波の侵入を防ぎ、振動や変形、ひずみを受けてもヒビ割れがなく長持ちする。

 開発した隙間埋め合わせ材は5mm程度の厚みで金属並みの遮蔽能力がある。これまでの既存品と比較したところ、電波シールド性能は最高で、金属との接着が可能、ゴム弾性もあり、常温だと12日で固まるなどバランス良く性能を発揮することが確かめられた。