ウンシュウミカンの全ゲノムを解読―品種改良の効率化に期待:農業・食品産業技術総合研究機構ほか
(2018年2月20日発表)
(国)農業・食品産業技術総合研究機構と国立遺伝学研究所の共同研究グループは2月20日、ウンシュウミカン(温州みかん)の全ゲノム配列を解読したと発表した。ウンシュウミカンをはじめとしたカンキツの品種改良の効率化が期待できるという。
ウンシュウミカンは国内カンキツ生産の約7割を占めるわが国を代表するカンキツ。品種育成にも積極的に利用され、70を超える品種・系統の親になっている。
ウンシュウミカンについては近年、DNA情報を利用した優良個体の選抜技術などが開発されているが、選抜の精度や効率を向上させるために全ゲノム配列(全塩基配列)の解読が求められていた。
ウンシュウミカンのゲノムは、2本ある染色体の一部をそれぞれ異にする、いわゆるヘテロ性が高いこと、また2本のうちの1本のみを持つ半数体が得られていないこと、などが原因で解読が遅れていた。
研究グループは今回、塩基配列を高速で解読可能な複数種のDNAシーケンサーと、新たなデータ解析手法を活用、部分的に解読された短い塩基配列を段階的に結合するという手法を用いることにより、ヘテロ性の高いウンシュウミカンの高精度な塩基配列の解読に成功した。
解読の結果、ゲノムの大きさは約3億6,000万塩基対で、遺伝子の数は約2万9,000個と推定され、うち、カンキツの着色に関わるカテロイド生合成遺伝子や、結実性に関わるジベレリン生合成・分解関与遺伝子など、農業上重要な遺伝子91個を見出した。
ウンシュウミカンはキシュウミカンの子どもにさらにキシュウミカンが交配されて生まれたことも分かったという。
今回の成果を利用することにより、ゲノムワイド関連解析を用いた果実形質や栽培性に関わる重要遺伝子の機能推定が高速化され、カンキツの品種育成を効率化することが期待されるとしている。