吸着分子で蛍光変化する新材料開発―有毒ガスなどの高感度識別に威力:筑波大学ほか
(2018年2月21日発表)
筑波大学と東京工業大学、京都大学は2月21日、揮発性ガスや有機分子などの高感度識別に応用可能な新材料を作成したと発表した。作ったのはナノメートル(1nmは10億分の1m)サイズの孔があいた多孔質結晶性ファイバーで、表面に吸着する分子によって強度や波長が大きく異なる蛍光を発する。分子を識別するのに応用出来るとして、爆発性ガスや有毒な揮発性分子などの識別に威力を発揮すると期待している。
研究グループは、樹木のような規則正しい分岐構造を持ち、有機EL素子の材料としても応用が検討されている巨大分子「パイ共役デンドリマー」に注目。この分子がさまざまな溶液中でどのような挙動を示すかを詳しく調べた。
蒸気拡散法と呼ばれる手法でこの分子を溶液中に拡散させたところ、分子同士が互いに引き合って凝集する現象「自己組織化」が起こり、多孔質の結晶性ファイバーが出来た。そこで詳しく調べたところ、ファイバーには長軸方向にナノサイズの孔が多数あいており、表面積がきわめて大きいことが分かった。BET表面積と呼ばれる専門的な手法で評価したところ、その表面積は1g当たり650㎡にも上った。
原料の巨大分子「パイ共役デンドリマー」は、熱で比較的寿命の長い蛍光を発するようになる分子として知られている。そのため研究グループは多孔質結晶性ファイバーの蛍光現象にも注目。水やアセトン、メタノールなどさまざまな溶媒の蒸気にさらして蛍光の変化を調べた。その結果、ほとんどの溶媒に対して蛍光の強度が顕著に増大、また溶媒の種類によって蛍光の色(波長)が大きく変わった。
この結果から、蛍光を調べればどのような溶媒に触れたかが調べられるとして、「揮発性ガスや有機分子を高感度に識別可能で、新しい分子識別材料としての応用が期待できる」と研究グループは話している。