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放熱性と柔軟性もつ複合材料―フレキシブル基板などに応用も:産業技術総合研究所

(2018年3月6日発表)

 (国)産業技術総合研究所は36日、高い放熱特性と柔軟性を兼ね備えたゴム複合材料を開発したと発表した。自由に折り曲げられるディスプレーや装着型ロボット用のフレキシブル基板が注目される中で、多機能化や高性能化に伴って増える電子機器の発熱を効果的に放出できる基板材料の実現に役立つと期待している。

 開発したのは、熱伝導性の高い窒化ホウ素の粒子とポリロタキサンと呼ばれるゴムのように伸び縮みするゲル状高分子の複合材料。一般にプラスチックやゴムなどの柔軟な高分子に窒化ホウ素などの無機物を添加すると熱伝導性が増すが、柔軟性が損なわれるなどの問題があった。

 研究チームは、熱伝導性を高めるために無機物の添加を増やすと、①高分子内で無機物が凝集して均一に分散しない②高分子と無機物との境界面でエネルギー損失が起きる、と考えられていることに注目。凝集しにくく高分子と親和性の高い無機物の開発に取り組んだ。

 まず、窒化ホウ素粒子を塩化ナトリウム水溶液中に分散させた後、水中プラズマを発生させて窒化ホウ素粒子の表面特性を変化(改質)させた。この粒子を分離・乾燥させてゲル状高分子「ポリロタキサン」に混ぜ、触媒などともに練り上げた。その結果、窒化ホウ素の濃度を高めても凝集しにくく高分子内に均一に分散。ゲル状高分子を繰り返し変形させても、その柔軟性や形状は維持されることが分かった。

 実験では、プラズマで表面を改質した窒化ホウ素粒子を分散させたことによってゲル状高分子の柔軟性(靭性)は最大5倍に向上した。また熱伝導率は窒化ホウ素の濃度が高いほど増加した。重量比で50%濃度にしたものは、表面を改質していない窒化ホウ素を入れた場合に比べ、熱伝導率は10%ほど高くなることも確認した。

 今後、水中プラズマ処理の最適化などによってさらに高い熱伝導の材料づくりに挑戦するとともに、企業などと連携して実用化を進める考えだ。