カラカラに干からびても死なない昆虫の秘密の一端明らかに―「ネムリユスリカ」の極限的な乾燥耐性を解明:理化学研究所/農業・食品産業技術総合研究機構
(2018年3月8日発表)
(国)理化学研究所と(国)農業・食品産業技術総合研究機構は3月8日、「ネムリユスリカ」というカラカラに干(ひ)からびても死なない昆虫の秘密の一端を明らかにすることに成功したと発表した。
ネムリユスリカは、ナイジェリアなどアフリカ北部の半乾燥地帯に生息するユスリカの仲間。
今回そのネムリユスリカが持つ「乾燥無代謝休眠」と呼ばれる珍しい能力の秘密の一端を両機関とロシア、米国の研究者からなる国際共同研究グループが解明した。
ユスリカは、ハエや蚊の仲間で、世界には約1万種以上もいるといわれている。その内の一種ネムリユスリカは、乾燥状態になると眠っているように見えることからその名が付いたとされ、乾燥状態になると無代謝(休眠)に入り、再び水に触れると休眠からさめて元の状態に戻る。
これを乾燥無代謝休眠といい、ネムリユスリカは体内の水分のほとんどがなくなって干からびても死なないという一般の生物では考えられない能力を持っている。
このためネムリユスリカの乾燥に耐える秘密は何なのかが注目され、2014年には国際宇宙ステーションの日本実験棟でネムリユスリカが「宇宙環境でも乾燥に耐えられるか」の宇宙実験が若田光一さんの手で行われている。
しかし、ネムリユスリカの乾燥耐性を制御する遺伝子レベルの仕組みはまだほとんど分かっていない。
今回の研究は、国際協力でその解明を図ろうと行われたもので、細胞に温度ストレスが加わると活性化してゲノム(全遺伝情報)上の特定の配列に結びつく「HSF1」と呼ばれる熱ショック転写因子(たんぱく質の一群)がネムリユスリカの極限的な乾燥耐性を制御していることが分った。
研究グループは、この成果を発展させれば様々な利用につながる可能性があるとし「たとえば、ネムリユスリカの乾燥無代謝休眠に関連する遺伝子群を任意の細胞で発現させることで細胞や組織の常温乾燥保存法の開発が加速する」と見ている。