血圧調整メカニズム―遺伝子レベルで仕組み解明:筑波大学
(2018年3月12日発表)
筑波大学は3月12日、生体内の血圧が安定的に制御されるナゾの一端を遺伝子レベルで解明したと発表した。血圧を上昇させる酵素「レニン」を作る遺伝子の働きが、血圧上昇に伴って抑制される仕組みをマウスによる実験で突き止めた。高血圧の発症メカニズムや治療薬の開発に役立つと期待している。
筑波大 生命環境系の谷本啓司教授、日本学術振興会の牛木亜季特別研究員らの研究グループが解明した。
レニンは腎臓で作られる酵素の一つで、血圧制御を担う重要なたんぱく質。レニンが作られると血圧が上昇するが、その一方で高血圧下ではレニンを作る遺伝子の働きが抑制されて血圧は安定的に維持される。しかし、レニン遺伝子がどのように血圧の上昇を察知して、その働きを抑制しているかはよく分からなかった。
研究グループは、遺伝子技術を用いて複数の遺伝子改変マウスを作成、高血圧に反応してレニン遺伝子の活性を抑制する遺伝子領域がどこにあるかを探した。その結果、レニン遺伝子の配列の一部が欠けたマウスでは高血圧環境下でもレニンを作る遺伝子の働きが低下せず、血圧の安定性が阻害されることが分かった。さらに、見つかった配列は遺伝子の働きを活性化するDNA配列として知られるエンハンサーに特徴的な化学構造を持っていた。
この結果から、研究グループはこのDNA配列が正常血圧の下ではエンハンサーとしてレニン遺伝子の活性化に寄与し、高血圧状態ではレニン遺伝子の働きを弱めて血圧を安定させる生体内フィードバック機構に関係しているとみている。